震災・原発事故による全町避難後初めて、大熊町の農産物が町外に出荷されました。出荷第1号となったのは、おおくま未来合同会社が栽培したホンシメジです。
ホンシメジは、広く流通しているブナシメジとは違い、エリンギのように大きく肉厚なキノコです。県のサポート事業として、県が開発したオリジナル品種の菌床で自然栽培に取り組む県内4団体の一つとして、初めて挑戦しています。居住制限区域の大川原地区に建てた小型ハウス3棟で10月上旬に育て始めました。収穫後は放射性物質検
査で安全も確認されています。
11月上旬に初出荷し、郡山市のホテルに納入されました。ホテルでは、フランス料理のフルコースで出した「和牛ロースのグリル きのこのグラタン仕立て」に使用されました。お客さんは「香りがよくておいしい」「歯ごたえがよかった」など感想を話していたそうです。
同社は、帰還した町民が震災前のように農業を営める環境を取り戻す目的で設立し、ホンシメジは初めて町内で試みる栽培です。温度管理などを徹底すれば1シーズン数百キロほど収穫できるそうですが、社員にキノコ栽培の経験者はゼロ。何もかも手探り状態での初年度の栽培です。
同社でホンシメジ部会長を務める増子四郎執行社員は「何年先なのか分からないけれど、帰還した時に町民が収入を上げられる先例となるよう、今のうちに試行錯誤を重ねたい」と話していました。