おおくま駅伝が12月17日、町内大川原地区で開かれました。
吉田町長の合図でスタートする小学生の部の出場者
スタートした一般の部の出場者
昭和63年に町民駅伝競走として始まった同大会は、平成23年の第24回を最後に開催が途絶えていたため、同大会が開かれるのは東日本大震災後初めてで約13年ぶりです。
震災前は、例年2月に町総合グラウンドをメイン会場として、県内各地から集まった出場者らが町内を駆け抜ける冬の風物詩となっていました。第24回大会では8部門294チームが出場する県内有数の駅伝イベントでした。
今回は、町立学び舎ゆめの森をスタートとゴールに、大川原地区復興拠点内の町交流ゾーンや公営住宅周辺を回るコースで行われました。町教育委員会の主催、サンアメニティとわたなべランニングクラブの共催。
わたなべランニングクラブのメンバーによる選手宣誓
当日は町内外から出場者が集まり、小学生の部32チーム、一般の部48チーム、合わせて320人が出場。両部とも1チーム4人で、小学生の部は1.5km 、一般の部は2kmを周回してタスキをつなぎました。
開会式では、吉田淳町長が「震災前の大会に出場されていた方や初めて町を訪れた方など、さまざまな方が参加している。交流を深めるとともに、復興が進む町内を走ることで皆さんに町を知ってほしい」とあいさつしました。
今大会のゲストとして招かれた、町出身の元プロ陸上選手で現在はスプリントコーチの秋本真吾さんが「小学生のときに何度も出場した思い出のある大会が再開されてうれしく思う。皆さんのすばらしい走りを応援しています」と出場者を激励。また、箱根駅伝5区の活躍で「山の神」と呼ばれた小高町（現南相馬市）出身の今井正人さん（トヨタ自動車九州所属）から寄せられた「小学生で初めて出場した駅伝がおおくま駅伝。そこで駅伝の面白さを味わえたことが今の私の競技につながっている。タスキと共に心をつなぎ、ゴールを目指してほしい」というメッセージが紹介されました。
レースは両部ともスタート時に雨や雪が吹き付ける厳しいコンディションとなりましたが、出場者らは熱い走りを見せ、次々に仲間へタスキを手渡していきました。沿道には多くの町民らが応援に集まり、出場者へ大きな声援が送られました。
雪の中を走り抜ける一般の部の出場者
競い合う小学生の部の出場者
閉会式は町交流施設linkる大熊で開かれ、入賞チームのほか、区間と男女ごとの上位入賞者が表彰されました。
小学生の部は大ちゃんRCA、一般の部はふくしま持久力クラブZが優勝し、吉田町長から賞状とトロフィーが手渡されました。
おおくま駅伝が復活するきっかけをつくったのは、郡山市に避難している渡辺隆弘さんです。ふくしま駅伝で町代表チームの監督を務める渡辺さんは、震災後、わたなべランニングクラブを結成。郡山市を中心に活動し、子どもたちを指導しています。活動の中で子どもたちにも大熊の空の下で走る体験をしてほしいとの思いから、町内での駅伝イベント開催を模索していました。
令和5年1月、秋本さんが特別指導のためクラブを訪れた際、2人は町内での駅伝イベント開催の話で盛り上がり、渡辺さんの思いが具現化していきました。
渡辺さんは始めに自分のクラブを中心とした小規模なイベントを検討しましたが、大熊町の駅伝イベントといえばおおくま駅伝。渡辺さん自身も震災前の大会に出場しており、「自分以外にも震災前の大会に思い入れや思い出のある人はいるはず。町内で大会が復活すると知れば、その人たちが参加してくれるのではないか」と考え、町に相談を持ちかけました。
そして、町との打ち合わせを重ね、おおくま駅伝の開催が決定。わたなべランニングクラブも共催として大会に関わることになりました。渡辺さんは、大会の準備を進める傍ら、陸上競技仲間や他のランニングクラブに大会の復活を知らせ、参加を呼びかけました。
大会当日、渡辺さんは運営スタッフとして大会の進行や競技のサポートに尽力。コースの誘導をしながら、力走する出場者らを見守りました。
レースを見守る渡辺さん
大会後、学び舎ゆめの森で秋本さんによる走り方教室が開かれ、子どもら約100人が参加しました。参加者は、秋本さんから走る姿勢や体の動かし方を教わり、フォームの改善に取り組みました。
フォームのお手本を見せる秋本さん
秋本さんは「平成23年2月の大会に特別招待選手として参加していたので、歴史ある大会の復活に立ち会えてうれしい。これからも走りを通じてふるさとに恩返しを続けたい」、渡辺さんは「大会が無事に終了してほっとしている。皆に楽しんでもらえてよかった。今回、復活ということで特別な気持ちで参加してくれた方が多かった。今後、回を重ねて、体を動かすことが好きな方が町にたくさん集まり、町内で走る機会が当たり前になる環境にしたい」と語り、今後の開催への意欲を燃やしました。
大会結果は町公式サイト（「おおくま駅伝2023」で検索）をご確認ください。
