町内で親しまれてきた理容室「かっとたざわ」震災から11年10か月ぶりに元の場所で営業を再開しました。理容室を再開したのは、田沢敦さんと妻の美香さん。夫妻の二人三脚はふるさとで新たな一歩を踏み出しました。
店舗前に立つ田沢さん夫妻
美香さんの祖父母が約80年前に開業した理容店が「かっとたざわ」の始まりです。敦さんと美香さんが結婚してからは二人で力を合わせながら理容業を営んできました。
平成20年に店舗兼住宅を新築し、新居での生活が落ち着いてきたころ東日本大震災が起きました。
会津若松市に避難した夫妻は震災から半年後に仮設住宅の一室を利用して営業を再開。敦さんは「大変だったが、なじみの客や仮設住宅に住む方からの再開を望む声が後押しになった」と当時を振り返ります。
その後、同市に店舗を構え、本格的に理容業を再開。店には地域の方も多く訪れ、「近所に理髪店ができてよかった」と避難先でも地域に親しまれる店になりました。
昨年6月30日に特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されましたが、町内には理容店が無い状態が続いていました。
「2年前、店舗兼住宅がある下野上の避難指示が解除されることを知り、元の場所で店を再開したいという思いが少しずつ大きくなっていった」と敦さん。「慣れ親しんだ会津から大熊に戻るのに抵抗がないわけではなかった。それでも地元に戻りたいという気持ちの方が強かった」と語ります。
帰町した方から夫妻のもとに寄せられた「戻ってきてほしい」との声も背中を押し、二人で相談し町への帰還を決意。それから毎週のように町へ足を運び、再開の準備を進めました。
そして1月15日、理容室「かっとたざわ」は震災から11年10か月ぶりに元の場所で営業を再開しました。
2月8日、店内には田沢さん夫妻と女性客の楽しそうな話し声が響いていました。「さっぱりした、気持ちよかったというお客さんの声が励み」と明るい表情を見せる美香さん。
「震災前のようなにぎわいはすぐには難しいと思う。それでも毎日の営業を積み重ねて、新しく町民になった方にも気軽に訪れてもらえる店にしたいです」と力強く意気込む敦さん。町内での新たな生活に「12年近く経ってまわりの風景は大きく変わってしまった。だけど、うまく言葉で表現できないんだけどなぁ、町には『希望』がたくさんあると思うんです」と敦さんは優しくほほ笑みます。
町内で営業を再開して約1か月。穏やかで気さくな二人がこれからも訪れる方を理容で癒やします。
(写真左)男性客の施術を担当する敦さん(写真右)女性客のエステを担当する美香さん
「かっとたざわ」のお店情報は、大熊町民の企業・店舗「理容室かっとたざわ」に掲載しましたので、ぜひご覧ください。