3月6日から19日まで開かれた大熊町議会定例会の初日、吉田淳町長が2020(令和2)年度の施政方針を表明し、4月からの町政運営の基本方針、重点施策、予算等を説明しました。
広く町民の皆さんのご意見・ご要望を伺う機会を設けるため、県内外で町政懇談会を開催します。町長就任1年目である私の考えをお伝えし、生活再建支援や復興加速化のための施策を説明した上で、皆さんの生の声に耳を傾け、今後の町政に反映させます。
いわき出張所をいわき市好間町下好間地区に、会津若松出張所を磐越道会津若松インターチェンジ近くの会津アピオの一角に移転します。新出張所の開所日はともに5月7日の予定です。移転後もこれまで同様の行政サービスを提供します。
大野駅周辺を中心としたエリアを、産業創出、交流人口拡大のため、産業交流施設やビジネスホテル、商業施設、住宅などを整備し、多くの人々が行き交う町復興の核としていきます。駅周辺の整備にあたっては、ゼロエネルギー施設の建設によりエネルギーの消費量を抑え、再生可能エネルギーによるスマートコミュニティの構築についても検討、ゼロから始める魅力あるまちづくりを進めます。
町内での雇用の場として、また継続的な生業の再生のため産業創出と企業誘致は欠かせません。その舞台として下野上地区に整備する産業団地を「大熊中央産業拠点」と名付け、ゼロカーボン、再エネ電力100%の産業団地を目指し整備します。
産業団地や駅周辺のスマートコミュニティへの電力供給のため、地域資源を有効活用した再生可能エネルギーによる地産地消の仕組みが必要です。エネルギービジョンを策定し、再エネの活用や、それに沿った企業誘致に努め、災害に強く、すべての町民にとって「居心地の良い場所」となるまちを目指します。
大川原地区復興拠点内に認知症高齢者グループホームを開所し、2018年度に作成した「大熊町福祉の里構想」をスタートさせます。併せて住民福祉センターを開所し、町民の皆さんの交流の場を整備します。
町内の医療環境を整備し、町民が安心して帰町できるよう町立診療所の整備を進めます。休止中の県立大野病院の早期再開を、引き続き県に要望します。
帰町を選択する町民の入居先として、災害公営住宅第2期分42戸が5月に入居開始となります。一方、応急仮設住宅の入居者が減少したため、入居者の孤立や防犯・防災上の危険性なども生じることから、できる限り速やかに退去していただくようお願いし、移転先の検討にあたっては情報提供や相談対応を行います。
生活サポート補助金制度、生活再建促進交付金制度の申請期限が、2021年3月末に到来します。対象者すべてに補助金が行き渡るよう、周知や申請受付会を実施します。
避難生活を送る町民の皆さんにふるさとを感じていただけるよう、町内の植物工場で生産したいちごの加工品を加えた生活応援物資を配布します。
新たな町への移住者支援として、住宅取得費用の一部を補助する制度を当初予算に計上しました。また、移住・定住を促進させるため、主に首都圏で町のPRを実施します。
帰還困難区域での巡回警備、帰還困難区域以外での見回り隊の巡回を継続するとともに、防犯カメラを70台増設します。また、町内住居に対する家庭用防犯カメラ設置補助金を引き続き交付します
防災行政無線や、エリアメールによる携帯電話への警報通知など、町内立入時の住民の安全を確保するとともに、災害発生に備え、帰還世帯に防災行政無線戸別受信機を配付します。
震災の教訓を踏まえ、国土強靭化地域計画を策定します。
町内の大気、水質、土壌の環境調査や放射線についての調査を継続し、結果を報告します。モニタリングポストで観測した放射線量に関するデータを、スマートフォンや大野駅に設置予定の端末からも閲覧できるようにします。
避難指示が解除された中屋敷や大川原地区、大野駅周辺と、除染が完了して立入規制が緩和された地区の道路や水路の本格的な改修や整備を進めます。
常磐道大熊インターチェンジ、大川原地区復興拠点、再開したJR大野駅と主要道路の国道6号、288号、県道いわき浪江線と既存の県道・町道を含めた道路ネットワーク整備を国・県と協力しながら進めます
避難先で事業再開した方、町に戻って事業再開を希望する方に対し、町商工会と連携し経営支援対策を図ります。併せて帰還環境整備を図る目的で、商業施設を2021年2月の完成を目指して整備します。
また、宿泊温浴施設についても、2021年7月の完成を目指して整備します。
国・県をはじめ関係機関の指導のもと、水稲の出荷制限解除に向けた実証栽培の継続、除染後農地での水稲栽培マニュアルを作成します。また、帰還後の営農再開を支援するため営農再開ビジョンも策定します。
昨年の台風19号で被害を受けた施設の復旧と適切な維持管理を行うとともに、震災前のような町民憩いの場とすべく環境整備します。
下野上地区で水稲の試験栽培を開始し、2022年度の避難指示解除と併せて水稲の出荷が可能となるよう努めるほか、新たな町の特産品として大川原地区で酒米の実証栽培を開始し、日本酒の醸造を目指します。
特定復興再生拠点区域外の農地で、農地の荒廃を抑制し、鳥獣被害や防火対策のため、農地の伐木・除草を継続し、前年度実施した箇所にウッドチップを敷き詰めて雑草の繁茂を抑制します
2022年春の開園・開校を目指し、大川原地区に、幼・保、小中一貫の教育施設を整備します。子どもたちが安心して学園生活を送り、地域コミュニティの核としての役割を担う多世代が学ぶ拠点になる環境を整えます。今年度は基本構想・基本計画に基づき、基本設計・実施設計に取り組み、環境に配慮した斬新で機能的な教育施設の建設を着実に進めます。
本町で学ぶ子どもたちにワンランク上の教育環境を提供し、個別最適化された学びの充実を図るため、幼稚園でタブレットの活用、小中学校ではデジタル教科書の活用やプログラミング教育など、ICTを活用した教育の充実を図ります。また、県内外の学校との遠隔授業を進めます。さらに、幼児期からの英語活動の充実を図るために、幼稚園で町雇用の英語指導助手を配置します。
昨年8月、個人文化財、震災資料の保全並びに歴史的公文書の収集・活用について、町アーカイブズ検討委員会から提言がありました。今後、貴重な資料や公文書を収蔵する展示施設の基本構想策定について、検討を進めます。
国登録有形文化財に登録された石田家住宅を保全するとともに、地域活性化を念頭に、展示施設、宿泊施設などに活用できないか検討します。
オーストラリア・バサースト市との姉妹都市協定を締結して30年になります。節目として姉妹都市との締結記念および希望の翼との関連を図った事業を実施します。
原発事故を経験し、存続が危ぶまれた町だからこそ、原発に頼らない町を目指すとともに、地域の再生可能エネルギーを活用して化石エネルギーに頼らない持続可能なまちづくりを決意し、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロとするゼロカーボンへの挑戦を宣言しました。大熊町が、原発事故の町ではなく先進的なゼロカーボンタウンとして、私たちの子ども・孫たちが誇りをもって語れるまちづくりを本年より進めます。
今年度は国の「復興・創生期間」の最終年。昨年末に示された「復興創生期間後における復興の基本方針」では、原子力被災地域に対し、「国が前面に立ち、当面10年、本格的な復興再生への取り組みを行う」との方針が示され、復興庁の10年延長が盛り込まれました。こうした政府の意気込みに呼応すべく、福島県はじめ関係機関と協力しながら、復興再生への歩みをさらに進める決意です。来年度1年間の取り組みは、その後の10年、さらには大熊町の将来像を決定付ける、極めて重要なものです。あるべき将来の大熊町に向けてしっかりと道筋をつけるため、広い視野をもって町の「現在地」を確かめ、「目的地」を見極めます。
昨年、一部の避難指示が解除された当町にとりまして、復興再生はいわば「周回遅れ」です。スピード感を持った中にも着実に、目の前の課題に取り組みます。
大熊町長 吉田 淳